本道にもようやく桜前線が上陸したらしい。気象台でなく松前町の独自観測だが、おとといの昼過ぎに松前公園の松前城前でソメイヨシノの開花が見られたそうだ
▼10年ほど前に松前を訪れたときには、幾種類かの桜が見事に咲き競う風景を眺めることができた。「桃色を重ねてさくら空に入る」松山瑛子。松前城では色調の異なるいろいろな桃色の重なりを見ることができて楽しい。そんな満開の日も、間近である。開花と聞いて、少し前に読んだ話を思い出した。ジャーナリスト池上彰氏が斎藤美奈子著『それってどうなの主義』の解説に書いていたことである
▼臨時教育審議会を取材していた際、日本の学校も9月入学を認めてはとの議論になったという。すると、「ある『有識者』が、四月入学の死守を主張して『入学式は、やっぱり満開の桜の下で行われないと』と発言したのです」。これには池上氏もあぜんとしたそうだ。その「有識者」は、日本国中どこでも桜の咲く時期は同じと信じていたらしい。北東から南西にかけて長い日本列島とはいえ、あまりにも想像力に欠ける。もとより本道の入学式が満開の桜の下で行われたためしはない。道産子にとって桜といえばやはり5月ゴールデンウィーク前後の行楽と花見だろう
▼日本気象協会の開花予想によると、函館がきょう25日、札幌が30日、5月に入り旭川が3日、釧路が14日とのこと。新年度が始まってひと月。一息入れるにはちょうど良い頃合いだ。その気持ちに寄り添うように咲く北海道の5月の桜もまた、風情のあるものである。