当たり前にあるものとして普段気付かずにいることも多いけれど、本当はかけがえのない宝物。ご存じの通り「北海道遺産」にはそんな意味が込められている
▼先週、第3回選定結果が発表になった。2004年までに52件が決まり発掘はいったん終わっていたが、ことしの北海道命名150年を機に追加することになったのである。今回15件が加わり合計67件。本道の広さを考えればこれでも足りないくらいだろう。新たに選定された15件を見ると、これまでとは趣の異なる遺産が増えたことに気付く。それは長年の風雪に耐えてきた古さを特徴とする遺産でなく、今まさにつくられている進行形の遺産である
▼その最たるものが「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」。90年に世界的指揮者の故レナード・バースタインが企画して札幌で始まった教育音楽祭だが、今やアジアを代表する一大イベントとして確固たる地位を築いている。「遺産」であると同時に「資産」でもある好例だろう。経営戦略論を専門とする米経済学者マイケル・ポーターハーバードビジネススクール教授は以前、こう語っていた。「今日のグローバル経済においても、競争上の優位性は、地域の遺産や特徴を利用することによって獲得できることが多い」
▼北海道遺産について分析したものではないが、本道の未来を展望する上で示唆に富む言葉でないか。北海道遺産を67件も抽出できたのは喜ばしい。ただ、集めただけで満足してはいけない。これをどう本道の未来に生かすのか。大切なのはここからである。