北海道胆振東部地震で大規模な土砂災害が発生した厚真町内では、土砂に巻き込まれた倒木が大量に山積みのままだ。この対策に向け、国や道が連携して木材、チップへの活用に乗り出した。土地所有者や自治体の処理負担軽減に寄与し、復旧工事の推進に弾みをつけている。
町内の倒木被害は公・民有林問わず広範囲に発生した。
このため災害復旧の効率化を図ろうと、道水産林務部林業木材課の仲介で地域の木材事業者を派遣し、国や道の各部局が発注した復旧工事現場の倒木を撤去。搬出費用は各工事の発注機関が負担する。倒木は木材事業者が製材やチップ材に加工して販売。廃棄物とされてきた倒木に木材としての価値を見いだす。
19日、厚真川水系日高幌内川斜面崩壊緊急対策を進めている室蘭開建の実施箇所で作業が始まった。苫小牧広域森林組合(本所・むかわ)が、約12万m²で約3800m³の倒木搬出を担う。
下請け会社の長尾工業(本社・むかわ)が、グラップルソー4台でカラマツを主とした丸太材を一定の長さに切りそろえる。丸太材はむかわ町穂別の同組合工場で梱包材やパレット材に加工。
枝や状態の悪い丸太材は、粉砕機2台を使ってその場でバイオマス燃料や製紙用のチップにする。丸太は月内、枝は年内に搬出を終える予定だ。
現場で指揮を執る同組合の松田明仁総括課長は「倒木を無駄にせず利用価値を見いだせる。協力できる範囲で処理したい」と話す。地震後は原料材が不足している状況で「今後、死活問題になる。ここで木材を確保できれば」と見据えた。
この取り組みは、自ら倒木撤去できない土地所有者を救済するとともに、災害廃棄物として処理する町の負担も軽減される。
復旧工事を担う岩田地崎建設(本社・札幌)の碓井裕介作業所長は「倒木がなくならないと次の作業に移れない。素早い対応に感謝している」と話していた。
室蘭開建の実施箇所より下流部にある室蘭建管の現場では26日に、イワクラ(本社・苫小牧)が搬出を開始する予定だ。