クリエイティブオフィスキュー(本社・札幌)の伊藤亜由美社長は、11日に札幌市内の北大フード&メディカルイノベーション国際拠点で開かれた、女性の多様な生き方を考えるシンポジウムで基調講演した。北海道の『食』に着目して番組製作したことを紹介。本道の魅力を発信し、元気にすることの大切さを説いた。
同社は5人組演劇ユニット・TEAM NACSなどのマネジメントを手掛ける芸能事務所。ことし創業27年を迎える。知名度は今でこそ高まったが、「十数年前は彼らの演劇を見てもらえるような機会がなかった」と明かす。テレビ番組『水曜どうでしょう』には大泉洋らが出演していたが、初めのころは「芸人が旅をしていると思われていた」という。
伊藤社長はプロデューサーとしてTEAM NACSの活動を後押ししている。5人の駆け出しのころを振り返り、「もっと役者として成長させ、認知度を上げたかった。活躍の場を東京に広げたときに、北海道の宣伝隊長になってもらいたいなという思いもあった」と告白した。
ほかにもやりたいことがあった。北海道だけでなく、「全国の人たちに見てもらえるようなコンテンツを作りたい」。北海道らしさを打ち出せ、かつコンテンツ化しやすいものを考えた結果、思いついたキーワードは『食』だった。「道産の食べ物はおいしい。『これはすごいことなんだよ。身近に生産者がいるんだよ』ということを子どもや親御さんたちに伝えたいなと」
この思いを形にして、2008年から始まったのが、HBCで放送中のあぐり王国北海道(現在は、あぐり王国北海道NEXT)だ。こだわったのは放送の曜日と時間帯。「家族で番組を見てもらい、その後、ご飯支度をして食卓を囲みながら、北海道の食に関する話をしてほしい。翌日の日曜日に、生産者の所に出かけてみようかとなればいい」
出演は東川町出身の森崎博之。祖父は農家だった。「小さいときに農業体験をしていた。彼だったら、うそっぽさを感じさせない本当の意味での農業を伝えてくれる」と期待して起用した。
活躍がTBSのプロデューサーの目にとまり、ドラマ『下町ロケット』や、『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』の農業企画への出演につながった。
映画制作にも携わった。12年公開の『しあわせのパン』は、洞爺湖町月浦が舞台。劇中の農産物や食器は道内でつくられたものを使用した。第2弾の『ぶどうのなみだ』は、岩見沢市内のワイナリーでロケ。25日には、せたな町で撮影した『そらのレストラン』が公開になる。
「北海道には魅力的なものがいっぱいある。新しい魅力を発見して、みんなで北海道を元気にしたい」と締めくくった。