キムラ(本社・札幌)は1日、非常用発電設備点検事業を開始した。軽量小型点検機により非常用発電機の負荷運転試験が廉価で簡単にできる。営業エリアは道内全域。万が一の事態を未然に防ぐ新しい点検手法として注目される。
オフィスビルや商業施設、病院など延べ床面積が1000m²以上の建物には、非常用電源を設置しなければならない。消防法に基づき、非常用発電機は年に1度、負荷運転試験をして誘導灯や警報器、スプリンクラーやエレベーターなどを稼働させることができるか点検する必要がある。
30%以上の負荷を掛け、必要な時間、連続運転をして調べる。しかし、試験がされていない場合もあるという。
背景にはいくつかの問題がある。外部電源喪失時でも単独で動くかどうかを調べるために建物の全館停電が必要なこと。これだと業務ができなくなる。夜間に全館停電をして試験をする方法もあるが、騒音問題などが懸念される。
建物によって発電機の設置場所は異なる。点検機は大型で、発電機が屋上や地下に設置されている場合は、搬入・設置が難しい。また、クレーンの手配や警備員の配置などで多額の費用が掛かり、最大で400万円ほどに膨らむ場合もある。
2018年の大阪北部地震で、国立循環器病研究センターの非常用発電機に何らかの不具合が生じ、停電が発生。その後の調査で、少なくとも5年以上点検を怠っていたことが判明した。日本内燃力発電設備協会によると、北海道胆振東部地震では145台の不具合が報告されている。
こうした課題の解決に向け、キムラは非常用発電設備点検事業に乗り出した。日本消防設備安全センターの認証を受けた軽量小型点検機を導入。大きさは幅約24×奥行き70×高さ80cmで、重さは40㌔程度。キャスターがついていて運びやすく、搬入・設置が簡単だ。点検費用は29万―60万円程度に抑えられる。
発電機と点検機をケーブルでつないで電気を送り、点検機が負荷を掛けて発電機の状態を確認する。停電させずに点検でき、業務に支障を及ぼさない。
キムラは、18年12月に非常用発電機の点検事業などを担うCE発電設備点検(本社・大阪)のネットワークグループに加盟した。日本全国をカバーしているグループで、情報交換や知識・技術の共有を図っている。
キムラマーケティング部の泉雅暁部長は「災害があったときにきちんと動くことを担保できるような働き掛けをしたい」と話す。道内には約1万2000台の非常用発電機があるとされる。マーケティング部発電機点検チームの石川秀樹課長は「5年後までには、10%に当たる1200台の点検を担いたい」と目標を示す。