ふるさと「北海道」でIR実現を
北海道のIR(統合型リゾート)誘致を見据え、2018年12月にIR運営事業者として苫小牧市に事務所を構えたラッシュ・ストリート(本社・シカゴ)。このほど北海道銀行主催の観光ビジネス展示会「インバウンドプロダクツ2019」で講演した日本法人ラッシュ・ストリート・ジャパンの若林忠志顧問(58)に、企業の特徴と事業構想を聞いた。
―「IR」でどのような実績を持ち、なぜ北海道で事業をやろうとするのか。
もともと不動産事業で約50年の歴史があり、IR開発との関わりは24年に及ぶ。運営者としては04年に開業したカナダが第1号で、17年までに北米で6カ所を手掛けてきた。日本は施設の建設や営業上の規制が厳しく、厳密なオペレーションを得意とする当社が強みを発揮できる市場だ。また、大都市ではなく地方での事業展開と地域貢献を理念としていて、日本の中でも豊かな自然や文化を誇る北海道・苫小牧エリアは当社にとって最適な土地と考えている。
―経済効果は。
道内に関する当社の試算では、施設全体の年間売上高が2000億―3000億円。1日当たりの訪問客数は1万2000人から2万人近く。建設などの初期投資は1700億―2200億円になる。開業後は年間400億円規模の地方税収をもたらすだろう。
―米国の先例は。
10年に開業したフィラデルフィアでは、開業前に比べて地元の平均家計所得が7割増え、住宅価格相場は6割上昇した。11年開業のシカゴでは税収が4倍になっている。各地域には世界中から視察客が来るが、首長など地域のリーダーたちは「誘致してよかった」と率直に話している。
―カジノのため、ギャンブル依存や治安悪化を懸念する声は根強い。
カジノは収益面で必要だが面積は敷地全体の3%にすぎず、この部分ばかり注目されるのは残念だ。北米でも開設前には一部住民の反対があったが、ふたを開けてみれば治安悪化などは起きていない。IR開設と犯罪発生率には相関関係がないという大学の研究結果もあるぐらいだ。
―若林顧問は以前、ワーナーブラザースジャパンの最高財務責任者を務めるなど東京での外資勤務経験が長い。北海道との接点は。
私は十勝の広尾町生まれで、高校まで道内で過ごした道産子だ。国際的なエンターテインメント業界での経験を生かして、ふるさとで何としてもIRを実現したい。(聞き手・吉村 慎司)