官民学連携し輸送ルート検討
道央圏の物流拠点である苫小牧港は道内最大の取扱貨物量を誇り、札幌近郊の石狩湾新港は7年連続で取扱貨物量が増加する。道央圏の物流が活発化するが、本道経済の将来を見据えると、十勝港など地方港湾の利用が物流の効率化につながると提言する。今後の展望を聞いた。(釧路支社 坂本 健次郎記者)
―現状について。
道内の物流は、変わらざるを得ない状況に直面していると思う。鉄道貨物においては、北海道新幹線が延伸し増便するとなれば、大きな影響を及ぼすことが懸念される。本州を走る新幹線のように30分間隔で運行することになれば、貨物列車の運行は従来の半分以下になると試算する。本道経済を支える基幹産業の一つは、農水産業。農産物は根菜類を中心に秋ごろ輸送の需要が高まり、水産品は常時運び出す必要がある。物流手段としては、海運を有効活用していくことが考えられる。
―本道の海運について。
国内貨物の大半は太平洋ルートで運ばれ、苫小牧港にほとんどの貨物が集まる。一方で北極海航路の展開が期待視され、札幌に近い石狩湾新港には北海道ガスがLNG火力発電所を建設。エネルギー資源を消費地に運ぶことで、採算が取れる。同港に対しては、北極海航路におけるゲートウェイとしての認識が高まりつつある。ロシアや北欧への輸送については、距離が近い釧路港も優位性はある。
―現状の課題は。
北海道の場合、秋口に大量の農産物が出てくるため、季節波動が大きい。ピーク時に対応できる輸送ルートを形成することに加え、季節波動を平準化する方法を併せて考えていく必要がある。
―考えられる打開策は。
十勝地方やオホーツク地方で生産した農水産物のうち、一部は釧路から大洗、常陸那珂ルートで送られる。しかしほとんどは札幌圏に集められ、鉄道か海運で苫小牧から八戸ルートで輸送する。一度札幌圏に持ち込むより、生産地から直接運ぶルートを釧路以外にも作る必要がある。注目しているのは、十勝港を活用することだ。
―十勝港について。
道東の貨物を帯広市に集約し、十勝港から岩手県宮古港ルートで輸送すると効率化の可能性がある。関東圏への輸送を考えると、帯広から鉄道で札幌経由で運ぶ場合と、十勝港から宮古港に擦り付けて陸路で運ぶ場合ではコスト、時間ともほぼ同じ。しかし宮古港からの陸路で20年度末全線開通予定の高規格道三陸沿岸道路を利用すれば、無料のためコストを削れる。
十勝―宮古ルートの船舶は旅客需要が低いため、船会社は貨物専門の「RORO船」を活用できる。建造費用も安く低料金を設定でき、経費削減を図れる可能性がある。また帯広周辺に整備された冷凍冷蔵庫などのストックポイントを活用するか、十勝港周辺に整備する。市場ニーズに合わせて出荷することで、季節波動の平準化が可能。ストックポイントの整備は、災害時のリスク分散にもつながる。
―実現するには。
何よりポートセールスが重要。行政をはじめ、荷主、船会社なども交え官民学が一体となって、輸送ルートを検討し、マーケティング調査を実施するなど港湾活用の勉強を早急に始める必要がある。
また帰り荷がないことも障害になる。しかし北海道から出て行く貨物の輸送が厳しくなるということは、自ずと入ってくる荷物も厳しくなるということ。北海道に入ってくる貨物は日用品や加工食品で季節波動がないため、海運を利用した輸送方法を拡大できれば、帰り荷の問題も解決できるはず。
千葉博正(ちば・ひろまさ)1948年岩手県宮古市出身。89年道自動車短大教授、97年札幌大教授、2018年同名誉教授に就任。苫小牧港地方港湾審議会や室蘭港長期構想検討委員会にも参加する。専門は都市・交通システム。
(北海道建設新聞2020年4月21日付1面より)