面白いニュースを目にした。26日付読売新聞の国際面に載っていた記事である。舞台はインド。15歳の少女がけがをして歩けない父親を自転車に乗せ、1200㌔を走破したのだという
▼経緯はこうだ。父親は出稼ぎ中にけがをし、折あしく発生した新型コロナで職も失った。看病していた少女が家に連れ帰ろうとしたが全土封鎖で交通機関は動いていない。そこで父親を後ろに乗せ、故郷まで走ったというのである。1200㌔といえば、札幌から東京を経て大阪へ行くくらいの距離である。話はさらに続く。現地メディアが一斉にこの美談を伝えると、インド自転車連盟が彼女の力を絶賛。代表選手を育てる養成施設に入るよう勧めているのだとか
▼新型コロナがきっかけでアスリートになる未来が開けたわけだ。とはいえこんな例はごくまれ。日本でも多くの若者は逆に将来につながる道を狭められている。夏の甲子園、全国高校野球選手権大会中止はその典型だろう。ここでの活躍がプロ入りの近道だった。もちろん球団のスカウトはもっと早くから実力のある選手に注目していよう。ただ甲子園では時に思わぬスターが出現する。その機会が奪われたのは残念だ。野球に限った話ではない。学校部活動の集大成となるインターハイも同じである
▼スポーツ庁がそうした全国大会を代替する地方大会の開催に、1大会当たり最大1000万円を補助する方針を固めたそうだ。あのインドの少女のように、卒業を控えた選手たちの未来につながる、チャンスあふれる大会ができるだけたくさん開けるといい。