リーマンショックが発生した2008年9月当時、日本への影響は他国に比べ小さいとの見方が支配的だった。日本ではサブプライムローンを組み込んだ金融商品がほぼ扱われていなかったからである。ただ、現実はそう甘くなかった
▼GDPは08年度に年度平均でマイナス3.4%、09年度にマイナス2.2%と2年連続のマイナス成長。08年9月に0・83倍あった有効求人倍率も1年後には0・42倍に落ち込んだ。なぜそうなったのか。大正大学地域創生学部教授でエコノミストの小峰隆夫氏は著書『平成の経済』(日本経済新聞出版社)で、3点を指摘していた。「輸出の落ち込み」と「設備投資のストック調整」、「在庫調整」である
▼今の日本も新型コロナウイルスによって同じ苦境に立たされているようだ。政府は7月30日の経済財政諮問会議で、20年度のGDP見通しをマイナス4.5%程度と予測。厚生労働省が31日発表した6月の有効求人倍率も前年同月比0.5ポイント減の1・11倍と低迷している。GDPのマイナスがリーマンショック以上なのは、先の3点に加え内需の縮小もあるためだ。経済再生が遅れると有効求人倍率の低下にも拍車がかかるに違いない
▼昔の悪夢が頭をよぎる。リーマンショック後、世界各国が大胆な経済政策を打ち出す中、日本だけは影響が小さいからと対策を小出しにし、デフレを深刻化させたのだった。近頃の政府のコロナ対応も中途半端で軸足が定まらない。リーダーシップはどこへ行ったのか。もっと腹をくくって医療と経済の両立に取り組んでもらいたい。