緊急事態宣言明け 開発局と旅行会社連携
本道観光業界で土木構造物を観光資源に活用するインフラツーリズムに注目が高まっている。北海道開発局が旅行会社と連携して実施する「公共施設見学ツアー」は、10月のみで32件を催す予定だ。緊急事態宣言が明けて観光需要が回復の兆しを見せる中、旅行各社はどのような工夫を凝らしているのか。「インフラわくわくツアー」を近く催行する2社を取材した。(経済産業部・室谷 奈央記者)
北海道オプショナルツアーズ(本社・札幌)は、16日に「積丹半島で巡る 後志の文学とインフラ整備の歴史」ツアーを実施する。札幌発着で市立小樽文学館や武威(むい)トンネル、鰊(にしん)御殿とまりなどを巡る日帰りのバスツアー。旅行代金は、1人当たり1万3980円(税込み)だ。
訪日外国人への着地型バスツアーを主力商品としていた同社。アフターコロナを見据え、大人数・低価格のツアーから少人数・脱低価格で企画性の高いツアーへの転換を目指している。永山茂取締役は「開建職員による解説のように知的好奇心を刺激する企画は、新たな客層の開拓にもつながる」と話す。
最少催行人員の10人を大きく上回る18人が申し込み。リピーターのほか、インフラ整備の歴史を学びたい建設業関係者からニーズがあるという。
札幌発着で十勝管内1泊2日のツアーを予定するのは北海道中央バス観光事業推進本部内のシィービーツアーズカンパニーだ。11月4日に「農業王国十勝の開拓の歴史」、同11日に「暮らしを守るインフラ施設」ツアーを計画している。それぞれ十勝大橋や幕別ダム、十勝ダムなどを帯広開建職員の解説付きで見学できるのが見どころ。旅行代金は、1人1室で3万4800円(税込み)。宿泊を伴うツアーで道外の技術者などにも参加してもらいたい考えだ。
前身となるシィービーツアーズはコロナ禍の旅行需要減少により4月に吸収合併。公共施設を巡るツアーは8年前から催行していたが、現体制になってからは初めて。嶋田浩彦統括マネジャーは「普段は見られない所を見られるという希少性のあるツアーは、コロナ禍でニーズがある」と話す。
インフラツーリズムは、安全や交通面から冬季の見学を受け入れない施設がほとんど。雪が降る11月中旬までがかき入れ時となる。
大人数旅行の実施が困難な状況を受けて各社が企画に注力したツアーに切り替える中、土木構造物を観光や地域振興に生かす取り組みが期待される。
(北海道建設新聞10月15日付3面より)