巨大地震に備え津波浸水想定
全国各地で大規模な自然災害が頻発し防災対策の重要性が高まっている。北海道でもさまざまな取り組みが実施されているが、2021年は災害に関連する、いくつもの節目が重なる年となった。東日本大震災から10年、本道を4つの台風が連続して襲った16年の豪雨災害から5年、北海道胆振東部地震から3年、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策がスタート…。過去の教訓を生かしつつ先を見据えた次の一手を打つ。自然災害に対応するための施策がことしも着々と進められた。
国の20年度3次補正予算で事業費が措置された防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策は、20年度末で期限を迎えた3か年緊急対策を延長し、気候変動で激甚化する自然災害への対策に加え、インフラの老朽化対策やデジタル化、無電柱化推進などについて25年度まで予算を上乗せするもの。21年度は治水対策など既存の事業を継続するだけではなく、道路の5か年加速化対策北海道ブロック版に盛り込んだ道横断自動車道足寄IC-陸別IC間の事業再開も検討され、7月30日に北海道開発局が再開を発表した。
8月には、内閣府が公表した日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデルを踏まえ、道が太平洋沿岸の新たな津波浸水想定を策定。総合局・振興局管内自治体ごとに、最大クラスの津波が発生した場合の浸水区域や水深、海岸線における津波水位、影響開始時間、津波到達時間を示していて、自治体はこれらの詳細なデータを津波ハザードマップ見直しなど防災対策に活用していく。
9月6日には北海道胆振東部地震から3年を迎えた。インフラなどの復旧・復興は進み、厚真川水系日高幌内川では恒久対策となる室蘭開建の砂防施設整備が本格化。ただ、崩落した森林の再生は時間がかかるとみられ、長期的に取り組んでいく必要がある。
東日本大震災では津波を考慮した施設整備やまちづくり、建築物の耐震化が加速、胆振東部地震では着実なハード整備と、そこからこぼれ落ちた部分をカバーするソフト充実の両立が課題として浮かび上がり、連続台風では河川流域関係者が一体となって防災・減災に取り組む流域治水の重要性も高まった。
こうして得られた教訓は道内のインフラ整備などに生かされているが、災害対策に終わりはない。いつ起こるか分からない災害に備え、何か不足がないか目を配り、優先順位を付けて対応していく。それを繰り返し、積み重ねていくことが地域の安全・安心につながる。5か年加速化対策の実施期間である25年度までにどれだけの事業を進められるか。地域が一体となった施策展開が求められる。
(北海道建設新聞2021年12月14日付1面より)