温室効果ガス削減の道険しく
8月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の作業部会がまとめた報告書に衝撃的な内容が記された。地球温暖化について「人間活動の影響であることは疑う余地がない」と人為起源であると断定。進行すると前例のない異常気象現象がさらに増えると警告した。この報告にアントニオ・グテーレス国連事務総長は「人類への赤信号だ」と発言し、一刻の猶予も許されない状況が確認された。
ことしは地球温暖化がさまざまな場面で話題になった。その要因とされる温室効果ガスの排出と吸収を均衡させるカーボンニュートラルも広く認識されるようになった。
「2050年カーボンニュートラル」の実現へ、政府は次々と方針を示した。4月、米政府主催の気候変動サミットでは、30年までに温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減する目標を表明。6月には地域脱炭素ロードマップを決定し、全国で100カ所以上の先行地域を創出して「脱炭素ドミノ」を起こすとした。10月には改定地球温暖化対策計画と、電源構成で再生可能エネルギーの比率を大幅にアップする第6次エネルギー基本計画を閣議決定した。
「ゼロカーボン北海道」を掲げる道の動きも活発になった。5月に気候変動対策推進本部の体制を拡充。6月には経済界などと推進協議会を設立したほか、市町村支援の在り方も検討して、全道的な取り組みに発展させようと考える。
ゼロカーボン北海道は政府の「骨太の方針」にも明記され、国の政策に位置付けられた。鈴木直道知事は、8月の省庁横断タスクフォースの地方支分部局レベル会合で「グリーン社会を強い決意で実現しなければならない」と述べ、再生可能エネルギーのポテンシャル、広大な森林資源を生かして先駆的地域を目指すことを表明した。
一方で、現場は混乱している。3月に策定した第3次地球温暖化対策推進計画では、温室効果ガス排出量の削減目標を35%に設定。しかし、国が46%削減を打ち出したことで、1カ月足らずで見直しを迫られることになった。環境審議会や部会メンバーは「35%削減でも苦労したのに46%をどう導き出すのか」「国際的に削減合戦になっているが、根拠なき目標は危ない」と語気を強めるシーンもあった。
世界はカーボンニュートラルへと突き進む。しかし、その裏で原油価格高騰が長期間に及び家計や企業経営に大きな打撃を与え、新型コロナウイルスからの経済回復の障壁にもなっている。原油高の要因は多岐にわたるが、今回の世界的な混乱を見ると再生可能エネルギーへの転換はまだまだ序盤であり、同時に再エネを主軸とするグリーン社会への道のりは長く険しいことを物語っている。
(北海道建設新聞2021年12月17日付1面より)