崎守と祝津の優位性確認 市民ら機運高める
室蘭洋上風力関連事業推進協議会(MOPA)は27日、室蘭洋上風力フォーラム2022を室蘭市市民会館で開催した。市民ら350人が基調講演やパネルディスカッションを通して製造、建設、発電事業の視点から室蘭港の優位性を確認。国の施策や先行する欧州の事例、人材育成の課題点なども共有し、洋上風力拠点化への機運を高めた。
新型コロナウイルス感染症対策でホール定員の半数までに入場制限し、施設内にサテライトスペースを設けた。
関根博士会長は「室蘭港のポテンシャルを共有し、ゼロカーボンの先駆的役割を果たす」、青山剛室蘭市長は「室蘭には洋上風力に必要なインフラストックと産業が集積している」とあいさつした。
基調講演で上村浩貴理事長は「室蘭港の崎守と祝津には強度、水深を備えた岸壁と広大な背後地があり、拠点化に必要なスペックが既に備わっている。洋上風力の産業化で人口減少が続く室蘭をもう一度輝くまちに」と思いを述べた。
日本風力発電協会の加藤仁代表理事は「室蘭港のスペックがあれば、洋上風力施設のコストを下げることが可能」と提示。同協会が人材育成に向けてスキルガイドラインを作成中で、メンテナンスの資格制度創設も検討していることを説明した。
パネルディスカッション第1部では、洋上風力産業ビジョンの2040年導入目標である45㍗の実現可能性を展望した。
発電事業者であるコスモエコパワーの真鍋修一常務は送電網やコストの問題に加え「漁業者などとの共存が重要」、同じくレノバエンジニアリング本部の吉田昌弘本部長代行は「浮体式の導入が前提。北海道は重要な鍵を握り、地域の理解醸成と人材育成が課題」とそれぞれ話した。
風車メーカーであるシーメンスガメサリニューアブルエナジーの青木俊篤営業・技術ゼネラルマネジャーは「1kW時のコストを下げるために高効率、大型化を進めている。大型化には港湾のスペックが重要。崎守、祝津は遜色ない」とした。
BWイデオルの山田睦カントリーマネジャーは、場所を選ばず深い海を有効利用できる浮体式洋上風力施設の利点を述べ、地域で産業化する上で「室蘭は恵まれた条件が整っている」とした。
パネルディスカッション第2部では、洋上風力と地方創生をテーマに意見交換。五洋建設の大下哲則土木部門洋上風力事業本部長は、同社が所有するSEP船について「北九州が母港だが室蘭も準母港的に利用したい」と表明した。
千代田化工建設の遠藤英樹電力・エネルギーシステムプロジェクト部長は、トルエンを媒体に常温常圧で水素を運搬できる自社技術を紹介し、「大量、長距離の輸送もロスがなく、パイプラインなどの既存インフラが使用可能」と利点を示した。
室蘭工大大学院工学研究科の木元浩一准教授は、同大がカーボンニュートラルに向けた社会人講座を検討中と説明。個人的意見と前置きした上で「長期的観点で洋上風力に人材供給できないかと考えている。企業が求める人材と、気候変動に興味を持っている学生などをマッチングできれば」と述べた。