3.1兆円を記録 土地や資材高騰が主因
住宅資金ニーズが膨らんでいる。2022年3月末時点で北洋銀行と北海道銀行の住宅ローン貸出残高を合わせると、3兆1873億円と過去最高を記録した。1年前から5%近く拡大。同じ期間の新設住宅着工戸数が微増だったのに比べて伸びが激しく、住宅価格の高騰が鮮明に表れている。足元では値上がりの行き過ぎによるニーズ縮小懸念などがあり、2行は増加ペースが鈍化するとみる。
「新規貸し出しの件数、単価ともに伸びた」(川村崇幸北洋銀ローン統括部長)。22年3月期決算によれば、北洋銀が扱う住宅ローンの期末貸出残高は1兆9060億円で前年3月末より757億円増えた。道銀は726億円増の1兆2812億円で、伸び率は6%と北洋をしのぐ。「商品の変更は特段なかったが、団体信用生命保険の充実などで支持をいただけた」(道銀リテール推進部)。両行の残高は近年右肩上がりで、コロナ禍でも増勢を保った。
利用拡大の背景には低金利がある。例えば3年固定・手数料定率型なら足元では2行とも年利0.7%で、日銀がマイナス金利政策を導入した6年前から一度も上がったことがない。ここに住宅ローン減税や住まい給付金といった国の景気対策が重なり、消費者が住宅を買う心理的ハードルは低くなっている。
ただ道内は人口減もあり、新しく家を建てる件数を見ればここ数年増えていない。21年4月―22年3月の新設住宅着工は3万2000件強で前年より300件ほど多かったものの、それまでは4年連続で減っていた。
建つ家が増えないのに、なぜ住宅資金ニーズが伸びるのか。主因には土地の高騰や、資材値上がりに伴う建築コストの上昇がある。これに加え、北洋銀によれば「新築が高すぎるため中古住宅の購入が盛んになり、リフォーム資金込みの貸し出しが増えている」という。リフォーム費の相場はマンションで400万―500万円、戸建てでは1000万円近くかける例も少なくない。同行では、新規貸出額に占める中古物件の割合が前年比で約5ポイント高くなった。
好況に見える住宅市場だが、今後は減速するとの見方が強い。特に持ち家は価格の影響を強く受け、ここ数カ月の着工件数は前年を1―2割下回っている。分譲を含む全体も3月まで4カ月連続で前年割れ。海外では米国の政策金利が上がるなど経済情勢に変化が見られ、日本の超低金利政策が終わるのも時間の問題とする観測が出始めている。
北洋銀は、4月以降も貸し出しペースは落ちていないとしながら、通期では前年並みを想定している。道銀の兼間祐二頭取は11日に開いた決算説明会見で、住宅ローンに関して「さまざまな状況変化があり、今までのような伸びは今期の業績予想に織り込んでいない」と話した。市場の変調はすぐそこまで来ているのかもしれない。
(経済産業部 吉村慎司)