小規模の中和濁水処理装置開発 富士エンジニアリング

2022年06月08日 08時00分

原水槽、ポンプなど一体化 凝集剤は天然由来、4tトラック積載可能

自動制御で現場の手を煩わせない富士エンジの中和濁水処理装置

 トンネルやダム、港湾浚渫工事の排水処理装置などを開発・製造する富士エンジニアリング(本社・札幌)は、4tトラックに積載できる小規模の中和濁水処理装置を開発した。原水槽と各種ポンプ、制御盤を一体化し自動制御することで、現場技術者の手を煩わせることなく雨水や汚水の適正処理ができる。沈殿処理に使う凝集剤は天然由来で環境負荷が低い。建設業をメインに農業や漁業など幅広い分野で使ってもらいたい考えだ。

 道路改良や建築基礎工事では、作業中に直面した雨や融雪による汚濁水を適正に処理しなければならない。一方で現場の省力化や働き方改革から処理装置に張り付いて作業することは難しく、ポンプの焼き付けなどトラブルを回避するため、自動制御で手の掛からない小規模機械の開発が市場ニーズとしてあった。

 富士エンジニアリングは、こうした現場ニーズを踏まえて1時間当たり10m³を自動処理できる小規模の一体型中和濁水処理装置を2018年に開発。複数の現場で使ってもらった後、21年11月に国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録した。リース・レンタルはカナモトが担う。

 取水ポンプで吸い上げた汚濁水を凝集剤と混合かくはんする原水槽と、泥分を取り除く沈降分離槽から構成する。取水ポンプと原水ポンプはインバーターで自動制御し、凝集剤の注薬ポンプもオプションで自動制御できるので、現場技術者の手を煩わせない。沈降分離槽から排出した汚泥を減容化できる機能もあり、産廃処理量の軽減でも効果がある。

 1次工程の沈殿処理で使う凝集剤には、天然由来のフジクリーンを勧める。食品添加物の一つで、カニやエビの殻から取れるキトサンを使用しているため環境負荷が極めて低く、生分解性が高い特長がある。セメントなどが含まれたアルカリ性の汚濁水は炭酸ガスで中和処理する。

 主力の型式FP―10NCは幅2200×奥行き3500×高さ2400mmほどの大きさ。設置面積は7.7m²で、4tトラックで運搬できる機動力も特長だ。市街地の狭小現場などに向けては設置面積3.92m²とワンサイズ小ぶりで処理能力が半分ほどのFP―5NCを用意する。

 土木や建築の現場だけでなく、農業分野でも使われている。SDGsを筆頭に環境保全意識が高まる中、今後は漁業分野の施設や設備の洗浄でも利用を見込む。

 山崎伸一営業部長は「インフラ整備と環境負荷低減は裏表の関係で、両方の実現にはコストが掛かると聞く。こうしたコストを少しでも軽減できる方法の一つが小規模中和濁水処理装置。現場の困りごとを解決できるようニーズを踏まえて開発した装置のため、ぜひ使ってほしい」と話している。


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