道の駅「羊のまち 侍・しべつ」が開業して1年が経過した。国道40号沿いの中心地に新たな集客施設が誕生したことで、観光客や休憩に来た人が立ち寄り、士別市の2021年度観光入り込み客数は20年度に比べ倍増した。市は波及効果をさらに広げるため、国道沿いの商店街へ観光客を誘う施策を検討している。
上川総合局がまとめた管内の観光入り込み客数調査によると、士別市の21年度入り込み客数は61万5900人で、20年度比で2.1倍に増加。コロナ禍前の18年度比でも1.8倍増と、入り込み客数は大きく増加した。
「羊のまち 侍・しべつ」は国道40号に面した士別市大通東5丁目440の23に位置し、建築主体を佐藤建設管理・久光組・高橋建設共同体、電気を共工電気工事・庄内余目共同体、機械をフジヤ住設工業・協業組合北部ガスセンター共同体が担当。基本、実施設計は柴滝建築設計が請け負い、21年5月に開業した。
「道の駅完成前は閉店したデパートが10年以上放置されていた。中心街に新たな拠点ができて良かった」と、まちづくり士別の専務を務める井出俊博駅長は語る。
道の駅には1年間で想定18万人を上回る33万9000人が来客した。大型駐車場も整備しており、観光客や休憩しに止まったトラック運転手らが多く訪問。これまで「通過点」となっていた市の中心地への集客拠点として役割を発揮している。
アウトドアブームにより、岩尾内湖白樺キャンプ場への来客者数が増加し、食料やキャンプ用品調達のため道の駅に訪れる観光客も多い。アウトドアを楽しむ来客に向け、まきを販売したところ、売れ行きが好調で、相乗効果が生まれたという。
道の駅による恩恵を波及させる点が今後の課題だ。市の中心地は典型的なロードサイド型となっており、大型店が立地する一方で、国道沿いの商店街はシャッターを閉じた店舗が目立ち、縮小が進む。「商店街をいかに活性化させ、道の駅で集めた人をいかに商店街へ誘導するべきか」と阿部淳商工労働観光課長は課題を示す。
一つの考えとして国道沿いを無電柱化し、中心街を歩いて回れる仕組みを阿部課長は挙げる。「検討するべき課題は多いが、街の景観や防災という観点で考えると、有効な手段なのでは」と、実現に向け準備を進めたいと意気込む。また商店街の振興策として、事業を始めたい人と空き店舗をマッチングさせる施策も計画している。
道の駅を起爆剤に中心市街地を再生させる取り組みが始まっている。