ことしは3年ぶりに新型コロナ感染拡大防止のための行動制限がない正月だった。久々に家族や友人で集まり、余計な気を使うことなく語り合ったり、旧交を温めたりした人も多かったろう
▼「三代の声重なりて今朝の春」矢野絹。以前はどこの家にもあった親と子、孫が一緒のそんなだんらんも避けねばならない日々が続いていた。親しい人の顔を間近で見、声を聞いて元気を実感できることほど幸せなことはない。経済学者の佐伯啓思氏が、阪神淡路大震災の被災者と長年向き合ってきた精神科医の言葉をエッセーで紹介していた。心のケアとは何かが分かったというのである。医師はこう語ったそうだ。「誰もひとりぼっちにさせへん、てことや」。逆に言うと孤立して心を病む人が増えたということだろう
▼災害の種類は違えどコロナ禍で人々を悩ませたのも同じだった。感染を恐れ家族にさえ会うのがはばかられたのだから、孤立を深めるのも当たり前。そう思うと、ことしの普通の正月が輝いて見えた。行動を制限される前の状態に再び戻りたくはない。国内の感染もまだ落ち着いていないが、今それ以上に心配なのが海外からの変異株の持ち込み。具体的にはいまだ感染爆発が止まらない中国である
▼2020年の流行初期、多くの中国人観光客であふれた「さっぽろ雪まつり」から感染が拡大したのは記憶に新しい。政府は8日から水際措置を強化すると決めたが当然でないか。もっと厳しくてもいいくらいだ。差別の問題ではない。「ひとりぼっち」の人をつくらないために必要な対策である。