十勝の中小「もう限界」 物価高直撃、価格転嫁など厳しく

2023年05月09日 17時00分

企業悲鳴 給付金求める声も多数

 物価高騰により、十勝管内業者の苦境が浮き彫りとなっている。帯広商工会議所の緊急調査で、市内249社のうち7割弱が月10万円以上のコストアップに直面。苦しい経営状況を明かした。市内の電気工事業者は「材料費が変動し、採算が合わないケースも増えている」と漏らす。加えて、慢性的な人手不足が経営を圧迫。即効性の高い事業者給付金を望む企業も多く、事態は一刻を争う。

(帯広支社・草野健太郎、太田優駿、城和泉記者)

 全国的には価格転嫁や賃上げ傾向にあるが、十勝管内は対照的な結果となった。中小・零細企業を中心にアンケートに回答した。「もう限界」「廃業も視野」などと漏らす企業が多く、帯広商工会議所は危機感を募らせる。

 2023年は運命の分かれ道になり得る。ゼロゼロ融資の元本返済に加え、全国的な賃上げの動きに苦しむ企業も多い。アンケートでは約半数が減額・据え置きを決めたと回答。一方で十勝管内は慢性的な人手不足が続いていて、従業員の定着・確保に向けた決断を迫られる。

 ただ、新型コロナウイルス対策の支援金で一時的に延命した側面もある。帝国データバンク帯広支店や東京商工リサーチ帯広支店の調査では、22年度から倒産件数が増加傾向。今後は資金繰りの限界を迎えた企業の「息切れ倒産」が続く可能性は高い。

 管内の建設業界は苦しい胸中を明かす。畳・室内装飾業者は「受注状況は変わらないが、材料費が高騰。請負額の単価交渉を続けている」と吐露。鋼建具業者は「新築件数が減った。今後はリフォームなどに注力するしかない」と話す。建設業者の社長は「従業員あっての会社。手当などでしっかり還元する姿勢は変わらない」と冷静にみている。

 札幌圏の人手不足が十勝にも波及している。十勝鋼製建具協会の加藤武志会長は「札幌は人口も建設事業も多く、職人が足りていない。だから貴重な地方の職人が引き寄せられている」と嘆く。ある十勝管内の鉄筋業者は「札幌近郊の工事で声が掛かった」と明かし、現状は苦しさを増す。

 住宅着工戸数の減少も大きく影響する。加藤会長は「戸建てはかなり減っている。住宅価格も高騰していて、若者は手が出せない状況」と指摘。日銀帯広事務所の鈴木正信所長は「しばらく需要の減退は続くだろう」と分析する。

 アンケートでは4割の企業が価格転嫁について「できない」と回答。一方で価格転嫁でコスト上昇分の回収に動く企業もある。ただ市内の建築資材製造業者は、転嫁できたとしながらも「来期は厳しい」と見通す。帯広商工会議所は「価格交渉力の低い小規模零細企業の比率が高かった」とみる。

 即効性の高い事業者給付金を求める企業は多い。帯広商工会議所は調査結果を踏まえ、帯広市に緊急要望する姿勢。三井真専務理事は「大企業主体の実態とはかけ離れた小さな声に向き合う」と話した。


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