2015年道内新設住宅着工のうち、分譲・賃貸共同住宅の着工戸数がまとまった。分譲マンションは前年比7.3%増の1898戸、アパートなどの賃貸は6.8%増の9978戸で、合わせて6.9%、767戸増の1万1876戸となった。賃貸は好調を維持。分譲マンションは駆け込み需要の反動減から回復し、地価が比較的安価な札幌市郊外を中心に伸びた。16年は、17年4月からの消費税率再上昇前の引き渡しを目指した一定程度の着工が見込まれる。
国土交通省が公表している新設住宅着工戸数のうち、構造がSRC造、RC造、S造のいずれかで、利用関係が分譲か賃貸に該当する道内の共同住宅を対象に集計した。
過去10年の着工動向を見ると、09年に全体で1万戸を切った後は徐々に回復。12年に国内外からの不動産投資の増加などで、08年と同水準の1万3000戸台に戻した。14年は消費増税による駆け込み需要の反動減のほか、建設費の高騰により賃貸が6%減少。分譲は、9割を占める札幌市で26.1%減と、過去5年で最大の落ち込みとなり、全体で2割台のマイナスとなった。
15年の分譲マンションは札幌市1823戸、小樽市35戸、帯広市40戸の内訳。札幌市は前年から253戸増加し、全体に占める割合は7.2ポイント増の96%となった。
不動産市場を分析しているインフォメーションシステムキャビンの志田真郷社長は、フージャースや京阪電鉄不動産といった道外デベロッパーが中央区を中心にマンション販売を本格化したほか、「14年に駆け込み需要の反動減などを受けて事業者が着工を控えた上、成約が販売戸数を超えて在庫が減ったため、供給調整に動いた」と見ている。
札幌市の区別内訳は中央区822戸、北区172戸、豊平区172戸、西区109戸。東区の390戸のうち354戸は、クリーンリバーが札幌繊維卸センター西側に整備するフィネス札幌ミッドステージ、厚別区の158戸は全て明和地所のクリオレジダンス新さっぽろだった。市全体に対する中央区の割合は45%で、郊外の再開発地域を中心とする立地の分散が続いている。
全国の着工戸数は、貸家が4.6%増の37万8718戸、分譲マンションが4.7%増の11万5652戸だった。
16年は、10%の消費増税を見据えた駆け込み需要が各用途で発生する見通し。分譲マンションは、9月までの契約に経過措置が講じられる戸建てと異なり、引き渡し時の税率が一律で適用されることから、17年3月末までの引き渡しに向けて一定程度の着工が期待される。
志田社長は「増税前の需要層は、中央区などを嗜好(しこう)する高所得者より大衆層」とし、16年も郊外への分散化が続くと指摘。函館市では北海道新幹線の開業効果を様子見した上での着工があるとする。一方で貸家は、相続税対策や低金利政策により、アパートなどの収益物件で堅調に推移するとみている。
16年の着工動向について建設経済研究所は、建築費の高騰で分譲マンションが前年度から減少する一方で、貸家は相続税対策による受注増が徐々に落ち着くことから微増を予測。矢野経済研究所は、分譲マンションが14.4%減の10万3888戸、貸家が5.3%減の35万5761戸を見込む。
15年の道内市町村別着工戸数は次の通り。(①SRC造②RC造③S造の戸数)
◇分譲▽札幌市②1823▽小樽市②35▽帯広市②40
◇賃貸▽札幌市①23②8251③58▽函館市②218③55▽小樽市②103▽旭川市②15③5▽室蘭市②16▽釧路市②24▽北見市②82▽岩見沢市②146▽網走市②20▽苫小牧市②168▽稚内市②11▽江別市②16▽赤平市②8▽名寄市②10③40▽根室市②16▽千歳市②267▽深川市②8▽富良野市②8▽恵庭市②150▽伊達市②15▽北広島市②26▽北斗市②40▽木古内町②15▽七飯町②24▽八雲町②12▽黒松内町②8▽真狩村②8▽京極町②8▽共和町②8▽赤井川村②8▽浦臼町②12▽妹背牛町②12▽上富良野町②13▽枝幸町②4▽遠軽町②25▽音更町②12▽浦幌町②6▽浜中町②4