真砂徳子の起ーパーソン 明日をひらく人々 第9回 (財)札幌青少年女性活動協会、北海道若者サポートステーション 代表 穴澤 義晴さん

2010年03月02日 12時25分

 札幌の秋の風物詩「だいどんでん」は、参加団体数日本一を誇る大道芸のイベントです。この催しは、若者の社会教育の場としても注目され、参加者の招集など運営の多くを担う若者有志が、主体的にまちのにぎわいづくりにかかわっています。プロデューサーの穴澤さんは、若者の雇用促進や自立を支援する外郭団体のリーダーとして、日々知恵を絞り奔走している人物。「だいどんでん」のほかにも、さっぽろ雪まつりの雪像をつくるNPOのまとめ役や商店街青年部のアドバイザーを務めるなど、数々のまちづくりプロジェクトも統括しながら、人とまち、若者と社会のつながりを模索し続けています。

若者の力を、にぎわいづくりの表舞台ではなく、裏方に生かそうと思われたのはなぜですか。

穴澤 義晴さん

穴澤 「だいどんでん」が目指すにぎわいは、「大(だい)道芸でまちを(どんでん)返しする」ほどのお祭り。若者たちは、とにかくたくさんの参加者を集めようと、どんどん外に出て人に声をかけるようになります。

 また、芸を披露するパフォーマーとお客さんである一般市民との間に、心地よさをつくる、という公道のイベントを意識した視点も持つようにもなります。大掛かりな舞台装置の演出などに頼らない「だいどんでん」は、運営スタッフが、集う人それぞれの思いを測り、感動の共有を探りながら、人の熱気を結集させ、ようやく盛り上がりをみせるイベント。

 自ら足を運び、時には相手に嫌な顔をされることだってある交渉ごとは、携帯電話やパソコンの通信に慣れている若者にとって、面倒な作業かもしれませんが、その試行錯誤には、バーチャルなネットワークづくりでは得難い喜びや楽しさがあるものです。顔と顔を合わせ、人と人、人とまちをつなぐおもしろさは、実際私も経験してきたこと。まちの未来をつくる若者たちにこそ、その醍醐味(だいごみ)を実感してほしいと思いました。

今の若者は、必ずしもイベント運営に手を上げるような積極的な人ばかりではなく、ニートや引きこもりなど、社会との接点を見いだせず悩んでいる人が増えているという報道もよく耳にします。

穴澤 就労相談などで、サポートステーションに定期的に通う人は年間300人ほど。そのうち2、3割は進路を決め社会へ出て行きますが、毎年それ以上に新たな相談者が増えています。たしかに相談者には、世の中に認められない自分はだめな人間なんだと思い込み、社会とのかかわりにおびえている人も少なくありません。

 私たちが実施するコミュニケーション能力強化を目的にしたサポートプログラムには、相談者と一般市民が一緒に参加できるものもあり、長年引きこもっていた人が、プログラムの終了時間を過ぎても、延々誰かと会話を楽しむなど、社会とのつながりを緩やかに回復させて行く様子もみかけます。

若者の自立支援で心がけていることは。

穴澤 義晴さん

穴澤 彼らに欠乏しているのは安心感。「失敗してもいいから、安心して思い切って」と伝え、まずはやりたいことに徹してもらっています。そして、悩みをため込んで「心の便秘」にならないように、安心して何でも吐露できる環境づくりに努めています。

 問題は彼らのその後です。この不況下、大卒でも就職が難しい時代に、人生の大半引きこもっていた人の雇用の確保は至難の業。ならば、そのような人たちが、一般就職の道を選ばずとも、夢や希望を持って生活することができる新しい「生き方」はないだろうかと思い立ちました。

 実は札幌近郊の田舎町で「現金収入が少ないから、自分が食べる野菜の栽培には農薬を使わない」という理由で、毎日無農薬野菜を食べている農家の知り合いがいるんです。少々形は悪いけれど無農薬でとびきり美味しい野菜なんて、札幌に住む人にとってはこの上ないぜいたく。先日、若者たちと協力し、農家さんが食べきれなかった野菜を、町中で販売してみたところ、思いのほか好評で。お客さんから聞いた野菜の評判を農家さんに伝えたら、こちらも思いのほか喜んでくれて。都市と農村の橋渡しに、新しい「生き方」の可能性を感じた経験でした。

 「人」という字は、依って立っています。私たちは、お互い頼り頼られながら生きていると気づくことができれば、社会に無関心にはなれないですよね。困ったときは「助けて」と言えて、助けてくれた人に「ありがとう」と言える。そして誰かを助ければ、「ありがとう」と言われる。自立した社会は、そうした人と人の安心できるつながりの中で育まれていくのではないかと、私は思います。

取材を終えて

支えることに感謝の記憶

 かつては、無口な少年だったという穴澤さん。自己表現がままならない悔しさと失望の日々から穴澤さんを救ってくれたのは、いつもそばで意を汲み言葉を補ってくれた友人の支えだったそうです。たくさんの人の思いを実現させる「支え」役や「つなぎ」役として一肌脱ぐことをいとわない穴澤さんのバイタリティは、周囲の人によって自分が生かされた感謝の記憶と、決して無関係ではないと思いました。


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