120年前のこと。米国の新聞社「ニューヨーク・サン」に8歳の女の子から一通の手紙が届いた。友達と意見が対立したので答えを教えてほしいというのである。その質問とは「サンタクロースって本当にいるの?」
▼記者は紙面を割いてこう語り掛けたそうだ。「毎年多くの人々がサンタのおかげで優しい気持ちになる。それは間違いのない事実だ。だから君が考える通り目には見えないけど確かにいるんだよ」。子どもは隠れた真実を無邪気に突いてくるから面白い。あまり夢はないが、今の日本ならこんな質問が出てきたりはしないだろうか。「選挙に『大義』って本当にあるの?」。安倍首相が来月仕掛ける見通しの衆議院選挙のことである
▼前例に倣って筆者が答えてみたい。「いいところに目を付けたね。でもまず知ってほしいのは、本来の『大義』と、政治の世界のそれは違うということなんだ。政界では本当の目的から国民の目をそらせたいときに隠れみのとして『大義』の言葉を使うんだよ」。「安倍首相はね、野党の弱体化や準備不足、足並みの乱れを見て今なら勝てると解散に打って出るんだ。でも理由が勝てるからじゃカッコ悪いだろう。だから選挙で日本の将来は大きく開けるとの『大義』を用意しているんだよ」
▼まあ教育的にはよろしくない話ではある。もっとも首相に限らず、先の国会で『大義』に公正な政治の実現を掲げながら、実際にはゴシップを基に政権攻撃ばかりしていた野党も同じ穴のなんとやら。子どもに自信を持って説明できる答えは見つかりそうもない。