先週金曜日、米航空宇宙局(NASA)の土星探査機「カッシーニ」がその任務を終え、土星大気に突入して燃え尽きた
▼打ち上げからちょうど20年。累計45万枚の画像データを地球に送り、新たな衛星の発見や謎に包まれていた土星の環の構造解明に大きな役割を果たしたのはご存じの通り。故郷を遠く離れて大成功を収め、惜しまれながら現地で世を去ったわけだ。機械とはいえ、お疲れさまとねぎらいたくなる。ことしの今時期、カッシーニの他にも宇宙開発上の画期的な出来事の節目となる周年が幾つかあることに気付く。例えばソ連が世界初の人工衛星「スプートニク1号」を宇宙に送り出したのが60年前の10月4日。NASAが惑星探査機「ボイジャー1号」を打ち上げたのが40年前の9月5日である
▼ボイジャーは今も健在で、太陽系の観測を終え搭載した地球の音や画像の記録と共に広大な銀河へ旅立った。知的生命体との遭遇を期待してだが、理論的には数十億年も飛び続けることが可能らしい。SFファンであればボイジャーと聞いて『スタートレック』の映画第一作を思い出す人もいよう。天体規模の雲状体が全てを破壊しながら銀河を進んできて、地球が危機に陥る話である
▼その雲状体とは遠い昔に地球を離れたボイジャーが知的進化を遂げたもので、創造主を探しに来たのだった。現実にそんなことが起こるとは考えられないが、未来に何があるかは分からない。もし帰ってきたとき、「核兵器で対立しあうこんな愚かな星が創造主のはずはない」と思われたくはないものだ。