まだ一度も「ふるさと納税」をしたことがない。ただ興味だけはあって、時折、各自治体の取り組みを紹介するWebサイト「ふるさとチョイス」をのぞいている
▼豪華すぎるとか、趣旨を逸脱した返礼品があるとか何かと話題のこの制度だが、肝心なのは使い道。このサイトで、思わず応援したくなる素敵な事例を見つけた。本道の遠別町である。ふるさと納税を活用し廃校寸前だった遠別農高を救ったというのだ。遠農は人口約2900人の町にある日本最北の農業高校。近年は入学者が減り、存続の危機に陥っていたそうだ。住民にとって学生は未来の希望。町が起死回生の策として打ち出したのが、遠農ブランドの食品や農産物をふるさと納税の返礼品にすることだった
▼丁寧な作りでおいしい遠農ブランドはもともと人気で、地元のイベントではいつも行列ができるほどだったという。返礼品にしてみるとこれが大当たり。寄付金は合計で以前の60倍、1億3000万円(2016年)に伸びたのである。町はこの大切なお金を遠農支援に充てた。ドローンやタブレット端末の授業への導入、札幌での遠農アンテナショップ開設である。好循環ができ、入学者も着実に増えているらしい。こうした町と遠農の物語に魅力を感じ、道外から来た生徒までいるのだとか
▼野田総務相が26日、全国の自治体にふるさと納税の使途を明確にするよう要望した。移住や交流人口の増加をさらに進めてほしいとの意図だそう。これを機に自治体が学び合い、遠別町のような優れた事例がたくさん生まれるといい。