だいぶ以前に読んだためどこで目にしたかは忘れてしまったが、「背負い方一つで重荷も軽い」という言葉を覚えている。長年山登りをしている経験からしても、これは間違いのない事実
▼ただ、ここでは気の持ちよう一つで、生きやすくも生きづらくもなることを教えている。人生に前向きで周囲には友好的なら軽やかに生きることができようし、逆に悲観、敵対の態度なら重荷を背負って生きることになるわけだ。石川啄木も悲観に陥りがちな人だったらしく、相当な重荷を負って生きていた風がある。「一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと」の歌がそれを象徴していよう。こうした攻撃的な感情が銃社会の中で何かの拍子に暴発すると、今回のような陰惨な出来事になるのかもしれない
▼日本時間2日午後に米国ラスベガスのコンサート会場で起こった無差別銃乱射事件である。少なくとも59人が死亡、500人以上が負傷したそうだ。銃乱射事件としては米史上最悪の死者数だという。容疑者の男は会場を見下ろすホテルの32階の部屋から、約10分にわたり2万2000人の観衆に向け自動小銃を撃ち続けた。男は自殺したが部屋には大量の銃と弾薬があったそうだ。多くの人を殺傷しようと周到に準備していたらしい
▼残虐な上に極めて卑劣なこの男、重荷の背負い方を間違えていたのだろう。銃の力を頼りゆがんだ感情を最悪の形で噴き出した。どんな重荷を感じていたにせよ、啄木のように祈るくらいでとどめておけばよかった。簡単に銃を入手できる社会の怖さである。