東日本大震災復興への歩み ②深刻な人員不足問題

2016年03月05日 10時37分

 復旧から復興に向かうにつれて深刻化したのが人員不足の問題だ。東北の主要都市で最も大きな仙台建設業協会の会員企業は当時、81社に過ぎなかった。ピーク時の151社から半減していた。「もし震災が5年後、10年後に起こったらどうなったか」。同建協幹部は公共事業削減など根深い問題に背筋を凍らせた。

 不足する技術者や技能者問題を解消するため、仙台建協は被災地の企業と被災地以外の企業が結成する「復興JV制度」の創設を国土交通省に要請。東北地方整備局や岩手、宮城、福島県、市町村などが実現にこぎ着けた。

 しかし、導入により最も期待した入札不調・不落の問題は収まらず、復興JVによる落札も限定的だった。それも行政機能の回復とともに散発的となり、やがて岩田地崎建設(本社・札幌)や伊藤組土建(同)、岩倉建設(同)、菱中建設(同)、北海土木工業(同)、堀松建設工業(本社・留萌)、堀口組(同)などが災害復旧工事を受注するようになる。

まちの再生に向けた復興工事

 日栄建設(本社・札幌)は、ことし1月に3件目となる災復工事を復興JVで落札した。下谷内尊則社長は「技術者ら6人を送り込んだ。仕事ぶりが評価され、認知度が高まっている」と手応えを感じている。

 イトイ産業(本社・士別)の菅原大介副社長は、学生時代を仙台市内で過ごした。大学の先輩ら交友関係から、災復工事の下請けに入り、技術者と技能者を合わせ20人を派遣。現場の主力を担った。

 「余震が頻発し、夜中に現場のトラブルで起こされる。気が休まる暇がなかった」。目まぐるしく変わる工程管理。復興現場の最前線で過ごした2年2カ月は、これまで経験した現場とは全く異なっていた。

 岩田地崎建設の武田稔土木部長は、2012年2月から14年4月まで東北支店の土木部長として陣頭指揮を執った。最も多忙だった12年度は、本社に在籍する土木技術者の45%に当たる43人が異動し、下水道の復旧や農地の除塩、築堤の造成などに追われた。

 震災後、初めて仙台空港に降り、空港周辺におびただしく積み上げられた廃車の山に衝撃を受けた。生々しい被災地の現実と同じく「営業活動が手探りなら、発注する行政も混乱し、受注しても工事に着工できないのはざらだった」という。その間に建設作業員や資材単価は見る見る高騰した。

 「重機は確保できたが、オペレーターが手配できない。そのうち生コンの出荷規制が始まり、予約して届くのは2週間後。雨が降ってもシートをかけて打っていた」。工期に間に合わせるため、あらゆるつてを駆使した。

 三陸沿岸道路整備など災復の大型工事発注は佳境を過ぎた。武田部長は「今後は住民の高台移転など定住先の確保に移る。一日でも早く生活の再建がかなうよう願っている」と、遠い被災地の光景に思いを巡らせた。

(2016年3月5日掲載)


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