きょうはインフラについて考える土木の日である。それにちなみことし見た中で最も印象深い土木施設は何だったろうと振り返ってみたのだが、やはり仙台湾南部海岸堤に勝るものはない
▼仙台、岩沼、名取、亘理、山元の3市2町にかけて築かれた全長29㌔の壮大な堤防のことである。東日本大震災の復旧事業として施工され、昨年完成した。津波という敵の侵入を防ぐ、日本版万里の長城といったところだろうか。10月に出た復興マラソンの15―23㌔地点がこの堤防沿いだったのだ。途中、コースを外れ上がってみた。傾斜こそ緩めだが7・2mの高さがある。天端からの眺めは実に壮観。はるかに伸びる堤防が太平洋と陸地を分けている。下のランナーが小さく見えた
▼ただ、これさえも多重防御を理念とする土木施設群の一部でしかない。そこから内陸に向かい、海岸防災林、人工の丘、かさ上げ道路と幾重にも壁が造られている。施工中の現場をあちこちで目にした。全体規模は驚くほどの大きさである。3・11から6年半。仙台の友人に聞くと、これだけ徹底して海を遠ざける事業が本当に正しいのか、との声も地元から出てきているそうだ。一方でいまだに海を見るのが怖いという人も少なくないらしい
▼土木も人の営みである以上、心を映すものである。であればあのときのすさまじい恐怖が、厳重で堅固な土木施設群を求めたとしても不思議はない。安んじるために大きな仕掛けが必要だったのだろう。それが正しいかどうかはまた別の話。遠からず冷静に見極められる時が来るのではないか。