大韓航空機爆破事件30年

2017年11月29日 07時00分

 国際諜報戦を取材している現役のTBS記者竹内明氏が書いたスパイ小説『スリーパー 浸透工作員 警視庁公安部外事二課』(講談社)にこんなシーンがあった

 ▼祖国とはまるで違う自由で豊かな国日本に「浸透」して長らく暮らすうち、つい自分の正体を忘れそうになった工作員が心の中で自分にげきを飛ばす。「選び抜かれた男だという自負がある。選抜してくださった金正恩元帥様への恩返しこそが責務だ」。お分かりの通り、祖国とは北朝鮮のこと。工作員は日本人の戸籍を乗っ取ってその人物に成り済ます「背乗り(はいのり)」で社会に溶け込んでいる。ごく普通の日本人として生活し、指令を受けると資金集め、拉致、殺人、テロといった工作を実行するのである

 ▼事実としてそのまま報道できないことを小説にしている部分もあるのでないか。北朝鮮のやり口は今も昔も変わらない。1987年、日本人に成り済ました工作員によって大韓航空機が爆破されたテロ事件から、きょうで30年である。実行犯金賢姫もひたすら北朝鮮に忠誠を誓い、体制を疑うことはなかったと聞く。韓国で民主主義に触れて初めて、教えられた知識はうそだと気付いたらしい

 ▼先週、北朝鮮の男8人が秋田の海岸に漂着した。こうした事件、毎年かなり起こっているそうだ。潜入経路として依然有効ということだろう。小説にも、沿岸には工作員を多数置き出入国を「徹底的にサポートする」とあった。脅威は現実である。30年を機に狂信的な工作員が今も存在する事実を思い出し、平和ボケに陥るのを戒めたい。


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