若者が世界で活躍するのを見ると胸がすく。19歳でバングラデシュに渡り、教育を受けられない子どもたちのために映像教育プロジェクトを始めた税所篤快さんもそんな若者の一人である
▼著書『若者が社会を動かすために』(ベスト新書)を楽しく読んだ。現在28歳。若さ故の突破力で他にも多くの挑戦をしているようだ。その過程で気付いたのは、社会を動かすには「人のつながり」が必要ということだったそう。高校の時にイベントで米倉誠一郎一橋大教授に「クレイジーなヤツが世界を変えるんだ」と激励を受け、学生時代にはグラミン銀行創設でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏に「前へ!前へ!前へ!」と背中を押されたそうだ。尊敬できる人との出会いで人生が変わり、社会を動かす力も得たらしい
▼あすは坂本龍馬が京都で非業の死を遂げてからちょうど150年(新暦)。激動の幕末を先頭に立って駆け抜けた龍馬という若者も、信頼できる師と出会えたことで道が開けた人だった。河田小龍や横井小楠に世界と伍していく方法を学び、勝海舟に海防の重要性と公(おおやけ)の精神を教えられた。「日本を今一度せんたくいたし申候」の手紙を姉乙女に送ったのも、師に鍛えられ、日本社会を大きく動かそうとの志を抱いたからである
▼今、日本の若者はさめていると評されるが本当だろうか。本来師と呼ばれるべき年齢の人々が過去にばかりこだわり、若者の大胆な挑戦を後押しすることに無関心なのでないか。「人のつながり」が希薄な社会では若者の活躍もおぼつかない。