もう何度目だろうかと記憶があやふやになっている人もいるのではないか。忘年会シーズンたけなわである。会社の同僚と、友人と、趣味の仲間と、愚痴ったり笑ったりしながら飲むのは愉快なものだ
▼ところでそこに水を差す話だが、このところ何軒か居酒屋を見てきて少々気落ちさせられたことがある。それは例えば5000円のコースを頼んだとして、以前と比べ明らかに料理の質と量が落ちていることである。「おいおいこの鍋、肉は表面に薄くあるだけで下は全部野菜だぞ」。最近そんな経験をした人も多いと思うのだがどうだろう。食べ物に文句を言う趣味はないのだが、肉や魚、カニといった華やかな具の目立たぬ鍋ほど寂しいものはない。料理の品数が少ないのも拍子抜けである
▼実感としてはここ5年くらいで、質と量が共に2―3割は落ちているような…。つまり実質的な値上げということだろう。道理で支払っている料金は昔と変わらないはずなのに、満足するには足りない気がするわけだ。居酒屋をはじめ外食産業では食材費の高騰もさることながら、どこも人手不足で人件費がかさんでいるらしい。全体の雇用改善を背景に、過酷な現場には人が集まらなくなっているのだとか
▼さらに追い打ちをかけるようで申し訳ないが、加えて言えば現在までにビール大手4社が来春から値上げで足並みをそろえることも決まっている。こうなると5000円コースのカニ鍋も、カニかま鍋に化けてしまうかもしれぬ。愚痴ばかり連ねたが、忘年会のつもりで笑って流してもらえれば幸いである。