およそ40年ほど前に青年だった人には懐かしく響く歌に違いない。フォークグループ「かぐや姫」の名曲の一つに『22才の別れ』(伊勢正三作詞作曲)がある
▼フォークデュオ「風」が歌ってヒットしたため、正ヤンこと伊勢さんの歌と言われた方がぴったりくるかもしれない。当時ファンだった人であればこんな歌詞もすぐに思い出し、口ずさめるだろう。「今はただ五年の月日がながすぎた春といえるだけです」。この曲がはやったころに20歳くらいだった安倍首相も一度や二度、口ずさんだことがあるのではないか。ただ、今口ずさむとしても「五年の月日がながすぎた春」とは歌わないはず。穏やかな春ばかりでなく、世間の厳しい目が照り付ける夏もあれば国際関係が冷え込む冬もあった
▼首相が政権を取り戻してから26日で5年。途中で首相の座を降りねばならなかった第1次と違い、良くも悪くも格段のしぶとさを身に付けた5年だったといえそうだ。気が付けば在職日数も戦後3番目の長さである。求心力の源泉はほかでもない経済の好転だろう。アベノミクスがどれだけ功を奏しているか定量的な評価は難しいが、この5年で名目GDPが約40兆円増え、日経平均株価は2倍以上、有効求人倍率も47都道府県全てで1・0を超えた
▼6年目に臨む来年度予算案も一般会計総額97兆7128億円の積極予算にまとめている。いやが上にもデフレ脱却への期待は高まろう。北朝鮮のように避けられない問題もあるとはいえ、安倍首相はこの際あまりよそ見をせず経済政策に力を尽くしてもらいたい。