子どものころ自分が大人になったら何になりたかったか、覚えている人は多いだろう。プロ野球選手や警察官、大工、ケーキ屋、歌手…。いろいろな願いがあったはずだ。ただし今、その仕事に就いている人がどれだけいるのかといえば、ほとんどいないに違いない
▼たぶんそれで良いのではないか。なれるなれないに関わらず、子どもが夢を持てる社会は健全である。未来に可能性が開かれている証拠と言っていい。加えて子どもの将来の夢はほほ笑ましく、それを聞くのは大人にとっても大きな喜びである。さて、それでは今の子どもたちの夢はどんなだろう。第一生命保険の「大人になったらなりたいもの」調査の結果がことしも発表になった
▼最もなりたいものは、男の子が15年ぶりに「学者・博士」、女の子が21年連続で「食べ物屋さん」だったそうだ。目を引くのは久々に1位を獲得した「学者・博士」だが、解説によると2014年から3年連続で日本人がノーベル賞を受賞したのも影響したらしい。女の子の注目は伸び著しい2位「看護師さん」である。今回は得票率で「食べ物屋さん」に1.8ポイント差。不動の王座を抜く勢いだった。人の命を救う仕事に憧れを持つ子どもが増えているのだという
▼日本社会の優れた面も問題のある面も、曇りのない子どもの心には真っすぐ伝わるということだろう。昨今、政治の世界を中心に教育無償化の議論が盛んだが、同時に大切なのは日本社会が誰にでも公正で未来への可能性に開かれていることでないか。大人の責任は重い。それを忘れてはいけない。