俳優高倉健が亡くなってもう3年たつのかと考えると、時の流れは速いものだと感じないわけにはいかない。実は今、少々「健さん」熱に浮かされている。道立近代美術館で開催中の「追悼特別展 高倉健」を見たからである
▼健さんといえば北海道。『網走番外地』から『鉄道員(ぽっぽや)』まで、本道で撮影した映画は数多い。出演した205本のうち30本以上がそうだという。道理で親しみが湧くわけである。今回の追悼展の目玉は、205本の作品映像全てを見られること。一つ一つの作品は少しずつだが、大小さまざまな画面で1956年のデビュー作『電光空手打ち』から最晩年の『あなたへ』までを追うことができる。あらためて全作品を知ると役の広さには驚くばかりだ
▼時代ごとに眺めていくと、自分の「健さん」がいるのに気付く。他の人も同じとみえて、それぞれ最もなじみのある映画の前で立ち止まり一心に見入っていた。老若男女誰にでも身近な映画があるのも健さんならではだろう。演じるのは一貫して「自分のことは二の次にして他の人や信義のために戦う不器用だが純粋な男」。現実の世の中には希少な存在だからこそ多くの人が憧れたのでないか
▼健さん本人がそんな人だったらしい。主役でありながらスタッフや共演者には誰よりも気を遣い、ロケで世話になった地元の人には後々まで感謝を忘れなかったと聞く。同展は21日で終わる。気になっていた人は急いだ方がいい。全部の映像を見るには2時間程度かかるためそのつもりで。ファンならずとも一見の価値がある。