本道は凍てついた日が続く。きのうの午前1時ごろには、喜茂別で1月の観測史上最低の氷点下31・3度を記録したそうだ。ありがたくない記録更新である
▼旭川市出身の小説家木野工の随筆「凍夜の想い出」のこんな一節を思い出す。「夜中にポンポンと音がしていたのはサイダーや醤油や酒の一升ビンが破裂した音だとわかった。親父たちが鍋を持って氷ったものをそれに受けていた。酒を齧るのを初めて見た」。冬になると戸外や車庫を冷蔵庫代わり使っているお宅はいまだに少なくないのでないか。「今夜はしばれて瓶や缶が割れるかもしれないから家の冷蔵庫に移しとこう」は、笑い話のような本道の日常である
▼さすがに野菜まで外に置いている人は多くないと思うが、安いうちにたくさん買って保存しておけばよかったと後悔している人が今は随分と多いかもしれない。この前近所のスーパーに行ったら小ぶりのダイコンが一本200円で売られていた。びっくりするほど野菜の値段が高いのである。農畜産業振興機構の「野菜の需給・価格動向」1月15日版によると、ダイコンは1㌔当たり204円(関東圏)で前年同期比2・5倍、ハクサイが127円で1・5倍、レタスに至っては579円で3・5倍だという。10月の長雨や台風の影響なのだそうだ
▼これでは冬に付きものの鍋もおちおちできやしない。体を温めてくれるはずの鍋が逆に懐を寒くする。とはいえこの寒波もあと1週間の辛抱。野菜の値段も遠からず下がろう。温かい家で冷蔵庫のビールでも飲みながらしばし待つとするか。