送電線のリダンダンシー

2018年01月31日 07時00分

 おととし8月の台風で道央圏と道東圏を結ぶ国道274号日勝峠が寸断されたとき、NEXCO東日本の道東自動車道が代替路として大きな役割を果たしたのはまだ記憶に新しい

 ▼緊急搬送、物流、観光―。もし代替路がなければ、と想像すると今更ながらぞっとする思いである。リダンダンシー(冗長性)が有効に機能した好例だろう。こちらはダメでもあちらは大丈夫。インフラを整備する上での基本思想である。インフラは生命維持や経済活動など人間社会を支える土台のため、何らかの事情でその機能が停止すると生活に多大な影響が出る。道路の例を挙げたがもちろんそれだけに限らない。電気も同じだろう

 ▼そこでどうも違和感を感じずにはいられないのが、月曜からテレビや新聞が盛んに取り上げている送電線利用率のことである。ニュースを聞くと大要こんな具合だ。「電力会社の利用率がおおむね20%未満なのに、空き容量なしとの理由で再生エネルギー事業者の接続を認めないのはおかしい」。はて、リダンダンシーの視点はどこに―。例えば単純な2回線の送電線であれば常に半分は緊急時用に空けてある。つまり設備に対する利用率は最大で50%。この余裕が安定供給を担保しているのである。あと80%使えるわけではない

 ▼平均が20%未満でもピークが50%近いなら容量はギリギリ。多くの命を危険にさらす冬場の大規模停電など考えたくもない。送電線運用の工夫を訴えることは大切だろう。ただリダンダンシーの視点を欠いては電力に対していらぬ誤解を生んでしまうのでないか。


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