立春も過ぎたというのに一向に寒気の緩む気配がない。「大雪の予感有事の予感あり」高松美智子。有事といって差し支えないほどの大雪に悩まされている地域も多い
▼本道では道南の厚沢部町で6日、積雪の深さが観測史上最高の145cmに達したそうだ。函館市も除雪が追い付かず市電の運行を取りやめねばならなかったという。本州では福井県の国道8号で1500台の車が立ち往生。日本海側の被害が大きい。中でも北陸は記録的大雪に見舞われている。気象庁によると、福井市の積雪深は7日現在で平年比7倍の147cm。しかも5日深夜から6日昼にかけて、半日で一気に70cm以上も積もったらしい。平年比3倍でも難儀なのに、半日で7倍になるのではいかに雪慣れした地域でもたまったものではない。立ち往生もしようというものだ
▼車に閉じ込められるといえば、中標津町など道内各地で9人が亡くなった2013年3月の暴風雪災害を思い出す。福井ではそんなことが起こらないよう願いたい。歌人土田耕平の童話に、山で大雪に遭ったお秋さんが奇妙な体験をする「雪に埋れた話」がある。「止めどなく降つてくる雪は、膝を埋め、腰を埋め、胸を埋める深さにまで積もつてきました」。動くこともままならなくなりお秋さんは思う。「もう助かりやうはない」
▼ふと気付くとお秋さんは長い雪の洞穴の中を歩いていて、炉に火をくべている巨人に会う。そこから少し歩くと出口が見え、一歩出てみると外はもう春になっていた。洞穴のようなこの厳しい寒波を抜ければ、日本の春も近い。