自警録

2016年01月05日 08時53分

 ▼武士道を海外に紹介したことで知られる新渡戸稲造は、本道とも縁薄からぬ人である。1877(明治10)年から札幌農学校の二期生として学び、米国やドイツへの留学後は同校で教授を務める傍ら、遠友夜学校を開設して貧しい家庭の子らにも無料で勉強を教えた。類いまれな情熱と使命感を持ち開拓期の教育を支えた人だろう。誰にでも分かりやすい言葉で語ったそうだ。本道にはいまだ慕う人が多い。

 ▼その新渡戸稲造の著書に毎日の心掛けを説いた『自警録』がある。今からちょうど100年前の1916年に書かれたものだ。第25章では、新年を迎えたとき自らが実践していることに触れている。それは「思想というか理想というか、かつておのれの心の、向上したときに抱いた考えと引きくらべてみる」ことだという。たとえば、子どものころ誓った勉強や読書を怠らないこと、人を恨んだり憎んだりしないこと、それが今でも守れているかどうか、一つ一つ省みていくのである。

 ▼きのうが仕事始めだった人は多いだろう。まだやる気のエンジンは暖まっていないはずだ。ここは活を入れるため、新渡戸先生に倣ってはどうか。かつて抱いた理想にどれだけ近づけたかあらためて確認してみるのである。もっとも先生自身が省みた結果「ただ恥ずかしきことばかり多い」と書いているくらいだから、理想に至る難しさは折り紙付きだ。ただこうも言っている。「低い標準の上に立っていくよりも、高い程度の所にぶら下がってゆくことにしたい」。この志を新年に。


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