あす10日は北海道の名付け親である松浦武四郎が亡くなって130年の忌日である。しかもことしはちょうど生誕200年。「北海道」命名150年の節目にこれだけ周年が重なるのも珍しい。勝手な思い入れではあるが、やはり本道とは相当に縁の深い人物だったといえるだろう
▼「花咲てまた立出ん旅心七十八十路身は老ぬとも」。亡くなる前の年、70歳で詠んだ歌である。探究心が尽きることはなかったらしい。武四郎は以前から「北海道人」の雅号を使っていた。北の海をさすらう世捨て人。つまり「北海」「道人」だ。ただし命名はこれを基にしたわけではない。アイヌの古老が自らの暮らす土地を「カイ」と呼ぶのを聞き、方角を示す「北」と行政単位の「道」を付けて「北加伊道」と提案したのである
▼その名前からは、地域の特徴を正しく表現したいと望んだ武四郎の真っすぐな精神が垣間見える。アイヌの人々が独自の豊かな文化を持って、この大地に生きている事実を尊重したかったのだろう。この節目に武四郎から学ぶべきことをあらためて考えると、地域に的確な名前を与える見識に思い至る。そのためには地域を丁寧に観察し、可能性や潜在力を的確に見極められなければならない
▼農業王国、スキーの聖地、温泉天国…。150年で北海道が獲得した名前は数多い。これから新たにつくられる名前、昔から存在するのに誰も気付いていない名前はまだまだたくさんあろう。それを見つけるのは、今を生きるわれわれの役目である。武四郎の探究心と行動力を見習って、いざ旅に出ん。