▼江戸末期の歌人橘曙覧の歌集『独楽吟』に、「たのしみはたのむをよびて門あけて物もて来つる使ひえし時」がある。思わぬ贈り物が家に届いたときの喜びを歌ったらしい。当時の贈答品が何だったかは分からないが、今の歳暮や中元なら、詰め合わせが一般的だろうか。食べ物であれば単品でもおいしいものが幾種類か入っているのだからうれしい。ふたを開けたときの見た目の華やかさも楽しいものだ。
▼芸能界のアイドルグループも、そんな詰め合わせの妙があるのではないか。浮き沈みの激しいこの世界で、長年、人気「商品」であり続けるには、単品での魅力を増しながら全体の価値を上げていく工夫がいる。成功例の代表格は「世界に一つだけの花」などのヒット曲で知られる男性5人グループ「SMAP」だろう。現在もテレビはじめ各方面から引っ張りだこの彼らだが、13日にスポーツ紙が解散説を報じた。降って湧いた情報にはファンのみならず、多くの人が驚いたようだ。
▼ことしはCDデビューから25周年だそうである。ファン層が幅広いのもうなずける。テレビで見ない日はないくらいの活躍ぶりだから、もし本当に解散ということになれば、惜しむ声があふれるに違いない。分裂、離党、新党結成と、何やら忙しく派手な動きを見せている割に国民から冷めた目で見られている政界の住民には、うらやましい話だろう。与党と並び立つ存在感もないのでは新党も空しいのではないか。単なる寄せ集めを詰め合わせただけでは、もらってもうれしくない。