▼女性も教育を受けるべきとの信念から行動し、それを認めないイスラム原理主義組織タリバンに頭を撃たれたマララ・ユスフザイさんをご存じだろう。勇気ある女性である。回復したマララさんは2013年に国連本部で演説し、テロや戦争を根絶するため世界中の人々にこう語り掛けた。「1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペンで世界は変えられます。教育こそが唯一の解決策です」。
▼無知は憎しみや暴力の温床になるから、まず考える力を身に付ける必要がある。平易な言葉に込められた切実なメッセージが胸を打つ。そのマララさんが先月、米大統領選で共和党候補者指名争い首位のドナルド・トランプ氏を批判した。イスラム教徒の米入国禁止を氏が主張したからである。暴言で物議を醸す人物だが人気は高い。黙って見過ごすことができなかったのだろう。マララさんは「他者を差別する憎しみのイデオロギー」「憎悪に満ちた発言」と氏をいさめたのだった。
▼そもそも米大統領になろうという人が、一般のイスラム教徒と同教をテロに利用している勢力とを同一視するなどどうかしている。英下院は18日にトランプ氏の入国を禁止する請願を審議したが、そんな反発も出ようというもの。氏の発言はむしろ過激派組織を喜ばせるだけだろう。来年のきょう20日は新しい米大統領の就任式だ。まさかとは思うが氏が大統領の椅子に座り、無知で世界を混乱させても困る。今からでも遅くない。マララさんに本とペンをもらって勉強してはどうか。