▼NHKの連続テレビ小説『あさが来た』に出演していたディーン・フジオカさんが大層な人気らしい。役柄なのだろうが優しく行動力があり、顔立ちも端正とくれば女性ならずともほれる気持ちは分かる。少し前の回でそのディーンさん演じる五代友厚が絡んだ事件として、開拓使官有物払い下げが取り上げられていた。本道の話題が出た途端、ドラマを見る目にがぜん熱を帯びるのは道民だから仕方ない。
▼事件は薩摩藩の黒田清隆と五代が結託し、破格の条件で官有物を民間に払い下げようと画策したものとされる。藩閥政治の弊害ともいわれたがドラマでは、五代が大阪の商人たちをまとめ、民間の力で開拓を立て直そうとしたいわば英雄物語として描かれていた。なるほど人の心の中までは読めないものだ。そういう解釈もあるかと感心した。それで思い出したのが2008年のかんぽの宿売却騒動である。どちらも膨大に投資したものを安値で売る羽目に陥った。同じ構図に見える。
▼官有物事件はその後政争の具となったが、これをきっかけに国会開設の動きが活発になり、民権運動も進展するのだから何が幸いするか分からない。一方で北海道は事件の翌年、開拓使が廃止され、函館、札幌、根室の3県制度に移行したが人口の不均衡でこれも頓挫。130年前のきのう26日、北海道庁に一元化された。最近、道議会会派自民党・道民会議有志が過去何度目かの分県議論を始めた。開拓の志再びというところか。活性化のためにはいろいろな可能性が探られていい。