冬季五輪が開かれている韓国平昌の夜空に17日、金銀両メダルの獲得を知らせる2本の日の丸の旗が掲げられた
▼その光景をテレビで見ていて、1972年の札幌冬季五輪スキージャンプ70m級で笠谷幸生選手らが表彰台を独占し、3本の日の丸が上がった昔日を思い出した人も少なくなかったろう。筆者もそうで、少年時代ゆえ国旗に特別の思いがあったわけではないが、今回同様ずいぶん誇らしい気がしたものだ。同日行われたフィギュアスケート男子フリーで羽生結弦選手が金、宇野昌磨選手が銀を決めたのだった。同一種目での日本人選手の金、銀獲得はその札幌冬季五輪の「日の丸飛行隊」以来の快挙である。しかも羽生選手は五輪連覇。この種目では66年ぶりだという
▼とはいえそんな記録などどうでもいい。あえてそう言いたくなるほど羽生選手の演技には唯一無二の輝きがあった。心の中で燃え盛る火まで見えるような鬼気迫る動き。出場が絶望視された右足首靱帯損傷からの見事な復活劇である。翌18日、さらに一人、日本に金メダリストが生まれた。スピードスケート女子500mの小平奈緒選手である。最後までスピードが伸び続ける圧巻の滑り。その瞬間、日本中で歓喜の声が上がったろう
▼胸が熱くなることは競技後にもあった。銀で悲嘆にくれる韓国の李相花選手に小平選手が駆け寄り、健闘をたたえ、2人はそれぞれの国旗を掲げながらしばらく並走したのである。カメラが一部始終を映していた。国旗は主役にはなりえない。ただ、ときに言葉以上にドラマを物語ることがある。