▼標準語が幅をきかせている北海道だが、方言がないわけではない。日常よく使うのは、ごみを「投げる」、手袋を「履く」あたりか。「しばれる」もいまだ現役だろう。一方で、疲れるを意味する「こわい」は最近耳にしなくなった。きょうは「方言の日」。といっても全国的なものではなく、「衰退しつつある奄美方言を保存・伝承していくこと」を目的として、鹿児島県の大島地区が定めた日だという。
▼言葉は土地に根付いた文化や習わしと密接に結び付いているものである。その言葉が消えていけば、共同体の絆もおのずとほころんでいく。各地で方言を守ろうという機運が高まっているのも当然だろう。『オバァの人生指南』(双葉文庫)に、沖縄方言で語られるこんな言葉があったのを思い出す。「銭とー笑ーらんしが、子とぅどぅ笑ーりーる」。銭とは笑い合えないが、子どもとは笑い合える、ということらしい。方言だからこそ気持ちが伝わる。やはり後世に残したいものだ。
▼残したくても消えてしまうものがあれば、なくすべきなのに後を絶たないものもある。政治家の不祥事などは後者の典型だろう。近頃は自民党国会議員のそれが目立つようだ。女性問題で16日に辞職した宮崎謙介氏をはじめ、金銭授受で閣僚を辞任した甘利明氏、金銭トラブルで離党した武藤貴也氏。不祥事とはいえなくとも発言などで物議を醸す人も相次ぐ。どうやら自民党という土地には、政権に安住するとおごりや緩みが出る習わしがあるようだ。「はんかくさい」ことである。