▼昭和初年から40年頃までの子どもたちの息吹を感じ取ることができる『親から子に伝えたい 昭和の子どもたち』(学研)という写真集がある。モンペ姿での授業や遠足、川遊び、鬼ごっこ、紙芝居に群がるたくさんの顔…。さまざまな風景が切り取られているが、その特徴は一言で表せる。にぎやか、だ。家の中に外に、そして学校にいつでも大勢の子どもがいた。同30年代生まれの筆者の記憶もそうだ。
▼少子高齢化による人口減少は、そんな風景も過去に閉じ込めてしまったようだ。道が最近発表した2015年国勢調査結果速報によると、10月1日現在の道内人口は5年前の確定値比12万人減の538万人だそう。北見市の人口が丸ごと消えたことになり、事態は深刻というほかない。年齢構成を示すいわゆる人口ピラミッドは、高齢者が多く子どもが少ないためこまのような形だ。日本にまだ余力があるから回っているものの、そうでなければとっくに倒れていてもおかしくはない。
▼高橋はるみ知事も人口減少問題には危機感を持って取り組んでいるようだ。19日明らかにした新年度予算案では、子育てや子ども支援のための予算を厚くしている。道の財政事情は依然厳しいが、新年度もTPP対策や老朽インフラの維持更新、新幹線効果の全道波及と、懸案がずらり。ただ、豊かな未来を手にしたいのなら、子どもへの投資を欠かすわけにいかない。子どもは地域に希望の種をまき、にぎやかさを取り戻す。知事には全国が驚くようなアイデアと施策を期待したい。