本田技研工業創業者の本田宗一郎氏は、自ら小型機の操縦かんを握るほどの飛行機好きだった。当時、飛行機をげた代わりに乗り回す企業経営者は本田氏くらいしかいなかったらしい
▼熱い思いは少年時代からだったようで、こんな逸話が残っている。米国から飛行家が来て、浜松で曲芸飛行をすると聞いた本田少年、いても立ってもいられず親に無断で学校を休み、自転車で20㌔離れた練兵場まで見に行ったそうだ。そんな本田氏のことである。今頃泉下でこの朗報には大喜びしているに違いない。ホンダの小型ビジネスジェット機「HondaJet」の2017年納入機数が、定員10人未満の小型ジェット機部門で初めて世界首位の座を占めたのだ
▼全米航空機製造者協会が21日にまとめた集計で明らかになった。それによると納入機数は前年比20機増の43機。主力市場となる米国での販売が好調なことに加え、フランスのエアタクシーサービス提供会社から16機の大量受注に成功したのが躍進の原因という。ホンダ製品は戦後、自転車にエンジンを載せたいわゆる「バタバタ」から始まった。それが70年後、小型飛行機で世界トップを走っているのだから大したものである。庶民には縁遠い乗り物だが、車やバイクでホンダに親しんできた人にとっては成長した子を見るようなうれしさもあるのでないか
▼HondaJetはエンジンを翼の上に配置し、機内空間の自由度を高めたのが特徴。ホンダらしい斬新なアイデアを詰め込んだわけだ。本田氏が存命ならきっとこう言ったろう。「俺が操縦する」。