▼米国のサブプライムローン危機に端を発したリーマンショックはまだ記憶に新しい。2008年のことだが、当時こんな短歌があった。何かしら被害を受けたに違いない。「アメリカよりドミノ倒しの世界不況八十三歳のわれにも及ぶ」(小石原百合子)。「中国より」と始めれば今の歌になろう。世界経済に再び暗雲が垂れ込めている。グローバル経済という荒馬を世界はなかなか乗りこなせないらしい。
▼ただ各国協調して手綱をしっかり持とうとはしているようだ。20カ国財務相・中央銀行総裁会議は2月27日、世界経済を成長させるため全ての政策手段を用いる、との共同声明をまとめた。経済の減速に立ち向かおうと足並みをそろえたわけだ。金融政策と構造改革をこれまで通り進めるほか、それだけでは不十分として、経済下支えと雇用創出のため「機動的に財政政策を実施する」方針を強く打ち出した。日本でも成長戦略としての公共投資が見直されることになるのではないか。
▼そうなるとまた大合唱が始まりそうだ。公共投資をすると国の借金がさらに増える、との公共悪玉論である。数量分析家の高橋洋一嘉悦大教授は『数字・データ・統計的に正しい日本の針路』(講談社)で、国のバランスシートの負債にしか目を向けないのが間違いと指摘している。資産と相殺すれば、借金が危機的とする論は「滑稽」だという。その分析は興味深い。経済成長は多くの社会問題を解決する。不況で嘆く人を出さないために、公共投資が有効なら積極的に役立てたい。