ベルギーテロ

2016年03月25日 09時36分

 ▼「祖国を救うために命を捨てる覚悟をした」人は強力だ。「われわれの救済はほんの狭い一角からでもスタートしうる」(『インタビューズ』文藝春秋)。誰の発言かお分かりになるだろうか。実はアドルフ・ヒトラーが1932年、取材に対し語った言葉である。最近であれば、過激派組織「イスラム国(IS)」が出した声明だとしても違和感がない。独裁者とテロリストには通じるものがあるらしい。

 ▼ベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄駅で22日発生した同時テロは、ISが関与した自爆テロだったようだ。犯行声明が出た。昨年11月にあったパリ同時多発テロの記憶もまだ生々しいというのに、再び欧州で大規模なテロが起きてしまった。少なくとも死者30人以上、負傷者も200人を超えるという。日本人も2人重軽傷を負った。空港も地下鉄駅も多くの人が集まる場所である。罪もない人を残忍に殺傷する所業は、大義の実現とは名ばかりの卑劣な犯罪というほかない。

 ▼5月には伊勢志摩サミットがある。欧州で勢いづくテロを日本に持ち込ませるわけにはいかない。安倍晋三首相は今回の事件を受け、「警戒警備の徹底」を指示したそうだ。万全を尽くしてもらいたい。一方、歴史人口学者エマニュエル・トッドは『シャルリとは誰か?』(文春新書)で欧州のテロは移民の問題でなく、「受け入れ社会の側の失敗」と指摘している。差別や格差を利用して人心を操るのは、独裁者やテロリストの得意技だ。日本社会は融和の精神も忘れてはなるまい。


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