入社式

2016年04月02日 09時30分

 ▼きょうは詩人高村光太郎が泉下に入って、ちょうど60年の日である。光太郎の詩といえば悲しくも美しい「レモン哀歌」がある一方で、行間から激しい感情が表出する「白熊」のような作品もある。彫刻家として出発した彼にとって、詩を書くことは彫刻から無駄なものを取り除くために必要な作業だったらしい。とりわけ有名な詩は「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」で始まる「道程」だろう。

 ▼当日、この詩を思い出した人もいたのでないか。本紙でも伝えているが、多くの会社や官庁できのう1日、入社式、入庁式が開かれた。採用された人にとっては社会に足を踏み出す第一歩、迎え入れる側にとっては新たな仲間との顔合わせである。希望と期待が出会う場と言っていい。「きらきらと輝く種を蒔にけり」(星野立子)。新人たちは良い土壌を得て幹を伸ばし、枝を張り、やがて大きな花を咲かせるに違いない。ただそれまでにはたくさんの失敗やつまずきも経験しよう。

 ▼落語の「道具屋」をご存じだろうか。与太郎が伯父の勧めで仕事を始める噺である。古道具売りを教えられ、往来に出店した与太郎は、のこぎりを火事場で拾ったガラクタと明かしたり、「珍(チン)なるものはないか」と聞かれ、「ネコなら家にいます」と答えたり失敗ばかり。新人を与太郎と一緒にするつもりはないが、先輩や上司がハラハラさせられる事態はこれから度々起こるはず。それでも理解できないと放り出さず、長い目で見て育てたい。彼らの「この長い道程のため」


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