落語に「うそつき村」があるのをご存じだろうか。神田の千三つと呼ばれるうそ自慢の男が、その村のうそ名人をやっつけてやろうと出掛けていく噺である
▼上には上がいるのだからうそもほどほどにせよとの思いでうそつき村の存在を教えた旦那は、勢い込んで飛び出そうとする千三つをこう諭す。「なにしろその村にいるものは、ひとりのこらずうそをつくんで、だれも、ほかの村のものはつきあわないそうだ」。「ひとりのこらず」はもちろん言い過ぎだが、「その村」を「財務省」に〝書き換え〟てしまいたいと思っている国民は今、少なくないのではないか。学校法人森友学園への国有地売却に関する決裁文書を、財務省がこっそり書き換えていたことが明るみに出た
▼佐川宣寿前国税庁長官の国会答弁と食い違いが出ないようにするため、国会に提出する文書に手を加えたという。これでは夏休みを何もせずにだらだらと過ごした子どもが、教師に叱られないよう日記を作り話で埋めたのと変わらない。そもそも誰が主導し、なぜこんな不正に手を染めたのか。麻生副総理兼財務相は会見で理財局の指示があったと説明したものの、詳細についてはまだ分からないとした。とはいえ財務省が国会に書き換え文書を出したのは事実。民主主義の根幹に関わる由々しき問題である
▼ただ、書き換え文書の前後全文に目を通してみたのだが、国会議員らの関与も近畿財務局の意図的な怠慢も読み取れない。森友側のごり押しが気になるだけである。財務省がうそをついてまで隠したかったものとはいったい。