平昌パラリンピック

2018年03月16日 07時00分

 国立民族学博物館で准教授を務める広瀬浩二郎氏が失明したのは13歳の時だったそうだ。数々のハンディを乗り越え文化人類学者となった氏は今、全盲を物ともせず野外調査を精力的にこなし、趣味で居合道もたしなむ。周囲の偏見を自らの工夫と行動で覆してきたのである

 ▼氏はこう顧みる。障害者はかつて社会の片隅で「こそっと」生きていたが、徐々に法も整備され「ちょこっと」自己主張できるようになった。氏の半生をつづった著書『目に見えない世界を歩く』(平凡社新書)で学んだことである。「ちょこっと」にはまだ先があるという。次は「がらっと」。それは「マイノリティが社会の常識、固定観念を引っくり返す」段階なのだとか

 ▼読んだときには何を言わんとしているのかよく理解できなかった。当方がいわゆる健常者だからだろう。ところが韓国平昌パラリンピックで選手たちの活躍を見ているうち、その一端が分かった気がした。障害者に対する固定観念が引っくり返されたからである。雪や氷の上に立つのは五輪と変わらぬ一人の競技者。障害の暗い影などどこにもない。「オリ」と「パラ」の違いは、スキーとスケートといった種目の違いでしかないようにさえ思えた

 ▼14日にはアルペンスキー女子大回転(座位)で村岡桃佳選手が金メダルを獲得。日本に初の金をもたらした。攻めに徹した滑りはまさに圧巻。頑張る障害者を見るのでなく、純粋に競技を楽しませてもらった。こうした「がらっと」を幾つも積み重ね、誰もが個性に応じて力を発揮できる社会に近づけるといい。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 北海道水替事業協同組合
  • 古垣建設
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,459)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,279)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,191)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,073)
おとなの養生訓 第170回「昼間のお酒」 酔いやす...
2019年10月25日 (852)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。