貿易戦争

2018年03月27日 07時00分

 高度成長期にユーモア交じりのサラリーマン心得を語り、人気を博した作家に山口瞳がいる。紳士の条件にも一風変わった持論があったようだ。『礼儀作法入門』(新潮文庫)でこう主張していた

 ▼「私は『鴨』になりたくない。そうして、いつでも、若い人に向かって、君が男なら、『鴨』になってはいけないと呼びかけたい気持ちになっている。男はギャンブルに強くなければいけない。勝たなくてはいけない」。いかにも日本が好景気に沸いていた昭和中期の雰囲気をよく伝える言葉ではないか。今の若者にこんなことを熱く語った日には、「うざ」がられた上に要注意人物として警戒されること間違いない

 ▼ところが海の向こうにこれを現在も地でいく人がいた。他でもない。米国のトランプ大統領である。貿易相手国にこれ以上「かも」にされるのはまっぴら御免とばかりに、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の高関税を課す輸入制限措置を発動したのだ。主な対象国は中国、ロシア、そして日本である。発動が伝えられると株価は世界中で一斉に下落。各国から保護主義を強める米国への批判と貿易戦争を危惧する声が続出した。トランプ氏との蜜月を演出していた安倍首相にとっては腹に一撃食らったようなものだったろう

 ▼今回の強硬策は11月の中間選挙対策との見方が強い。負けると任期後半は死に体に陥るため必死である。『トランプ』(文藝春秋)に氏のこんな答えがあった。「勝つためなら何でもする」。仕事について聞かれた時のことだ。紳士というよりは、やはり要注意人物の方か。


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